骸なき葬儀とは空しいものだ。
こうやって、下官の葬儀に出席するのは何度目だろうか。そのたびに噛み締める無力感は、何度経験しても慣れるものではない。
あの日、評議会室に乱入したローブの男。
自らを「”闇の落とし子”の従者」と名乗っていた。街々に現れては消えていた人影が、初めてその全貌を表したのだ。
公衆の面前でガードを「消滅」させた男は、すべての生きとし生けるものへの呪詛と自らの血を以って同志への決起を促した。
警備強化の打ち合わせに訪れていたジェロームの戦士ギルドでその一報を聞いた時に味わった衝撃と無力感は、一生忘れることはないだろう。
だが、ひとつだけ収穫があった。
今まで亡霊のように付き纏っていた人影が、明確な「敵」として認識できたのだ。
「闇の落とし子」エクソダスの復活を信じるものたち。漠然と「狂信者」と呼んで来た者達は、はっきりと我らに敵対した。
振り上げた拳の下ろす先がはっきりとわかったのだ。
狂信者たちは莫大な魔力を秘めた結晶を作り上げ、エセリアル虚空間への裂け目を作ろうとしている。
そう、煙のように出たり消えたりしていた以前とは違う。
奴らはトリンシックの回収した高魔力の結晶を奪還すべく、関連する全ての町を襲うと宣言した。眷族を従えて襲撃してくるのも時間の問題だろう。
今までのように翻弄されるのは終わりだ。あのそそっかしい広報官も首長と冒険者に協力を要請すべく駆けずり回っている。
建築担当者は防御の薄いトリンシックに防護壁を建築するため、埃まみれになりながら工夫たちの指揮を執っている。まもなく強固な壁が完成することだろう。
―――戦いはもうすぐだ。
※本フィクションは、8月1日(土)に行われるEMイベントに連動しています。
集合場所等については、追って発表致しますので、いましばらく御待ちくださいませ。
本イベントに連動して、7/29(水)より首長の就任している街が狂信者の襲撃を受ける可能性があります。各街の市民各位におかれましては、くれぐれもお気をつけ下さいますようお願い申し上げます。
また、現在トリンシック港周辺は狂信者の襲撃に備え防護壁を建築しております。
港にお越しの場合は防護壁周辺に設置されたゲートをご利用下さいませ。